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 目を開くと、そこは無限の星空だった。
「また、か」
 少女は、呟く。
「さて、今度はどんな目に合わされるのやら……この時ばかりは不安になるのう」
 無限の星空に微かな亀裂が入る。その亀裂は徐々に大きくなり、裂け目となる。
 そして、星空は砕け散った。ただ一人の少女を残して。

「暗いな」
 今回の第一印象である。
「君は……誰だ、どうやってここまで来た?」
 不意に、老人に話しかけられた。
「妾は旅人じゃ」
「旅人、だと?」
 その答えは波紋となり、周囲に広がっていく。
「この時代にまだ旅をするような人間が居たとは」
「終にここも終わりか」
「可愛らしいお嬢ちゃんじゃないか」
 周囲に広がっていく声は、全て老人の物だった。
 姥捨て山。少女の脳裏をそんな単語が過ぎる。
「すまないが、ここは何処じゃ?」
 少女は目の前に居る最初に話しかけてきた老人に問いかけた。
「ここは……」
 だが、その老人が答える前に周囲が口々に答える。
「姥捨て山だよ」
「人類最後の砦じゃ」
「人の忘れ形見」
「もうまもなくここは墓場になる」
 暗闇に浮かび上がる影はやはりどれも老人の物だった。正確な年齢は判らないが恐らく七十代以降であろう。
「お嬢ちゃんはどうやってここに?」
 少女の目の前に居る老人が逆に少女に問いかけた。
「ふむ、まあこちらが先に名乗るのも礼儀というものじゃな」

「妾はルルティア・サーゲイト。誇り高き冒険者にして悠久の旅人である」

「ルルティア・サーゲイト?」
「ここに来た方法だが妾にもよく分からん。が、妾自身は頻繁に体験している現象なのでな……別な世界からワープして来た、そうとしか言えん。信じるかどうかは御主らに任せるがの」
「そんな事がありえるのか……?」
 目の前の老人は懐疑的ではあるが、少女に他意は無いと分かってくれたようだ。どうやら、この目の前の老人がこの老人達のリーダーのようだ。
「これは天の助けか」
「あの世の使いか」
「何れにせよ、これで我々の行いは無駄ではなくなる」
「そうだ! 今こそ復讐の時だ!」
 周囲の老人達に、激情が広がっていく。
「盛り上がっている所に水を差すようで悪いが、ここは何処なんじゃ?」
「……お嬢ちゃん、君の後ろにあるものが何だか分かるかい?」
「後ろ……?」
 そう言われてルルティアは振り返る。
「これは……そうか、ここは……」
 僅かな光源しかない薄暗い部屋。
 しかし、人が生活するには巨大すぎる空間。
 そして、その奥に鎮座する巨人。
「機動兵器……か?」
「そう、名は”レクイエム”」
 ”レクイエム”
 その言葉が出ると周囲の老人達が一斉に沈黙した。
「察するに、妾にこれに乗れと?」
「……そうなる」
 その時である。
 うす暗かった空間が突如として赤い光に満たされた。それと同時にけたたましいブザーが鳴り響く。
「終に……ここも見つけられたか!」
 リーダー格の老人は悔しそうに歯噛みした。
「敵か?」
「そう。殺戮兵器だよ……我々はもう終わりだ」
「何なら片付けるが?」
「いや、お嬢ちゃんがどれほど強くてもそれは無理だろう」
「妾はこう見えて出来る方なのだが?」
「どの道、ここを見つけられた以上我々に逃げ場は無い。だが」
 老人は、少女の肩に掴みかかった。
「頼む。君は生き残ってくれ」
「頼まれずとも生き残る」
 老人の剣幕に気圧される事無くルルティアは即答する。
「せめて、戦う相手が何者か位は教えて欲しかったが……その暇はなさそうじゃ」
 警報だけではなく、明らかに何かを破壊する音が近づいて来ていた。
 ルルティアは、”レクイエム”の胸へと伸びているタラップを無視してコクピットに跳躍した。地上から5mはあるであろう巨人の胸へ、たった一度の跳躍でたどり着く。
 しかし、それと同時にこの部屋を守っていた最後の隔壁が破壊された。
 鳴り響く銃声。明らかに人の意思を持たない殺戮兵器が老人達を容赦無くなぎ払う。
「我等の希望を!」
「頼む!」
「このままでは死ねぬ!」
「人類の意思を!」
「”レクイエム”を!」
 それが、老人達の最後の言葉だった。

「……コクピットというより処刑台に見えて仕方ないのだが」
 レクイエムのコクピットを見たルルティアの感想である。
 金属製の椅子に、金属製の肘掛け。レバーやトリガーの類は見当たらない。
 その代わり座ると丁度頭部が来るであろう位置の上に巨大な丸い金属の塊がある。
「四の五の言える状況ではないか」
 ルルティアは、その座り心地の悪そうな座席に――実際座り心地は悪かったのだが――座ると、頭上から例の金属の塊が降りてくる。
 それと同時に、金属の枷が少女の手足を拘束した。見た目は電気椅子そのものである。
 そして、少女の意識はブラックアウトする。

「……む」
 少女は、自分の腕を見て呟いた。
「イメージフィートバックシステムとはまたハイテクな物じゃな」
 その腕は鋼鉄の巨人の腕だった。
 ルルティアの意識は、レクイエムと完全に一体化していた。ルルティアの手がレクイエムの手となり、ルルティアの足がレクイエムの足になる。
『マスター登録完了』
 機械音声がルルティアの脳裏に響いた。
『オープンコンバット』
「では蹴散らすか」
 レクイエムと一体化したルルティアはタラップをへし折り、老人達を虐殺した殺戮兵器を文字通り蹴散らした。
 殺戮兵器と言っても全長1.5m程のロボットに過ぎない。全長6mを超えるレクイエムなら文字通り蹴散らす事ができる。機銃で反撃してくるがレクイエムの装甲はそれをあっさりと弾き返した。
 ルルティアの脳裏に、次々とレクイエムの情報が書き込まれていく。
「とりあえず武器をよこせ。無いなら無いと言え」
『武装モジュール”クラウ・ソラス”展開』
 背部のバックパックから液体金属が流れ出し、両腕に集まっていく。
「”クラウ・ソラス”と来たか」
『形状をインプットしてください』
「なら、不敗の剣の鞘を抜くとしよう」
 ルルティアは、脳裏に自分の”相棒”をイメージした。すると、液体金属はすばやくそのイメージ通りの形を形成していく。
 全長6mを超える鋼鉄の巨人”レクイエム”と同程度の長さの柄と、その先端から曲線を描く刃が形成されていく。
 形成されたそれは、巨大な鎌。それもシャープな刃ではなく肉厚の刀身を持つ巨大鎌と呼ぶべき代物である。
「”クラウ・ソラス”は一説によれば抜く者によってその形状を変えるとされておる……まあ、あくまで一説なのだが」
 ルルティアは、前方の破壊されかけた隔壁に鎌の先端を叩き付けた。隔壁は叩きつけられた部分を中心に大きく歪む。
「と、言うか……外に出られないではないか!」
 全長6mのレクイエムのほぼ同サイズの通路と隔壁はレクイエムが外に出るための大きさを確保できていない。
『高周波モードへ以降』
 レクイエムの機械音声がそう告げると、大鎌の刃の部分が鋸のように細かく波立った。
「これで切り裂いて出ろと。なかなか器用な武器じゃな」
 その刃を隔壁に叩きつけると火花を散らして隔壁が切断された。
「なんとか出る事くらいはできそうじゃな……では、一気に突破するぞ」
 その言葉通り、数枚の隔壁を次々と切り開きながらルルティアとレクイエムは外へと飛び出す。

「な……何処だここは!?」
『ポイントO1D0』
 外へ出たルルティアの眼前に広がったのは白銀の大地。地平線まで白一色である。空まで白く染め上げるほどに真っ白な世界だった。
 そして、空に浮かぶ青い星。
「……あれ、ひょっとして地球か?」
『地球です』
 地球は青かった。青かったからといって地球とは限らないが恐らく地球である。
 地球が空にあるということは、今居る場所は当然地球ではない。
「太陽が見えないという事は……多分、火星じゃなここは。ここが太陽系ならばの話になるが」
『ここは火星です』
 だが、ようやく外へ出たルルティアを待っていたのは火星の雪だけではなかった。
 殺戮兵器。それも、レクイエムの半分程度のサイズのエアクラフトから数十倍のサイズになる戦艦まで。
 レクイエムとほぼ同規格であると思われるロボットまで居る。
「いや、待て。まさか……」
『捕捉されました。回避行動を』
 それらの殺戮兵器が一斉に、ルルティアに――正しくはレクイエムに――向けて砲撃を開始した。

 とりあえず、背部に二基装備されたバーニアを使って上空に逃げる。
『目標、全敵勢力の撃破』
「正気か! 質量差だけで何十倍あると思っておるんじゃ!?」
『大よそ』
「待て、具体的な数字を聞くと心が折れそうだから言うな」
 レクイエムが立っていた場所と、その地下に存在した施設ごと砲火は全てを消し去った。雪の下に隠れた赤錆の大地が姿を現す。
「いっそ最初からそうすればよかったではないか!」
『本機体の鹵獲が目的でした』
「コレはそんなに重要なものなのか?」
 更に浴びせられる砲火に右往左往しながらもなんとかルルティアは避け続ける。
『理論上は戦闘師団一個大隊の戦力に匹敵します』
「そういうのを机上の空論と言うのじゃよ!」
 しつこく追ってきたミサイルを切り払いながらルルティアがツッコミを入れる。
『警告。残存活動時間23時間45分』
「鬼か!」
 カノンだかバルカンだか分からない弾頭をギリギリで回避しながら更にツッコむ。
「いい加減に……」
 右方へ大きく回避したかと思えばすばやく左方へ切り返し、弾幕の隙間を突いて弾幕を浴びせ続けてきたロボットに肉薄する。
「しろッ!!」
 ルルティアが手にした大鎌を一振りすると、数機のロボットは一撃で両断され、爆散する。
「切れ味は悪くなさそうじゃな」
『”クラウ・ソラス”の攻撃を無力化できる装甲、シールドは存在しません』
「頼もしい事で……行くぞ、レク!」
 しつこくミサイルを連射してくる巨大戦艦に向かって、ミサイルを斬り散らしながら接近する。
「そぉいッ!!」
 戦艦の底部に、刃を滑り込ませるとまるで豆腐のように実にあっさりと両断された。だが、流石に一撃で沈めるには質量差がありすぎた。
「なら手数で補うまで……そろそろ本気を出すぞ」
『警告。異常なエネルギー反応を感知』
「幻想蹂躙!」
 レクイエムが蒼いオーラを纏う。その蒼いオーラは幾つものレクイエムの影を作り出した。
「斬影舞踏迅ッ!!」
 影の刃が振るわれる。巨大な戦艦に幾つもの切れ込みが入り、爆発四散した。
『解析不能なエネルギー反応を感知』
「それは妾の物だ。気にするな」
『了解』
「次行くぞ次!」
 だが、味方の被害を何とも思わないのか周囲の戦艦から容赦無い砲撃と、それ以外からの弾幕を浴びせられた。
「いかん、積んだ」
『ラウンドシールド展開。前方へ回避してください』
「何だか分からんが分かった!」
 ルルティアは言われた通りに前方の弾幕に突っ込む。
 すると、その手にあった大鎌が円形の盾へと姿を変えて砲弾を弾き返した。
「……起用じゃなぁ、この武器」
 盾を構えて次のターゲットに定めた戦艦へと突撃する。
「炎皇砕断!」
 ルルティアの叫びと共に赤いオーラがレクイエムを包み込む。それと同時に盾は再び姿を変え彼女の相棒である大鎌へと変化した。
「黒龍爆砕刃ッ!!」
 その刃先を突き刺された場所から、爆炎が広がり戦艦を文字通り叩き落した。
「一個大隊か……過言でも無さそうじゃ」
『警告。敵中型機動兵器に包囲されています』
「褒めたんだから礼くらい言え、レク」
 左右に細かく回避し、避けられない弾は二つに分かれた円形盾で弾く。
『レク、とは?』
「ロボットのAIはカタカナ二文字が相場と決まっておる」
『レクイエムの略称ですか』
「違う、お前の事だ」
『理解不能ですが了解』
 地面へ向けて突撃。衝突寸前で軌道を変えて雪を巻き上げながら地表ギリギリを疾走する。
「ヴァリアブルテイルッ!!」
『それは何でしょうか?』
「暫定名称だ!」
 液体金属が、レクイエムの臀部に収束され長い一本の尾となる。
「雑魚は消えろッ!」
 敵陣に特攻したレクイエムの尾は、中型機動兵器――即ち、レクイエムと同程度のサイズのロボットやエアクラフトを――切り裂いて飛んだ。
『人間では行えない思考パターンです』
「人間じゃないから仕方ない」
 さらに襲い来る大型ミサイルを尾撃が切り裂いた。しかし、そこから分裂したミサイルがレクイエムに迫る。
「多弾頭ミサイルか!」
『ラウンドシールドを』
「いや、スパイラルニードルだ!」
『それは?』
「暫定名称じゃ」
 尾が引っ込み、長髪へと変じた。髪の束が迫り来るミサイルの全てを貫き、破砕する。
『人間では不可能な思考演算』
「人間じゃないからしかたないんじゃちゅうの」
 レクイエムの、ルルティアの猛攻に力押しでは撃破不可能と判断したのか敵軍隊は包囲するように後退し、陣形を立て直す。
「コイツの使い方が大分分かってきたぞ。そろそろ全力を出すが構わんな?」
『了解』
 両腕へと集まった液体金属が巨大な腕を作り出す。
「ベルセルククロゥッ!」
 右手で捕まえた敵機を、近くに居た別な機体へ投げつける。
「るる・ばーにんぐ・すとらいくッ!!」
 炎を纏った左腕が敵機を弾き飛ばし、大型戦艦へと衝突した。
「まあ、やっぱり一番はコレな訳じゃが」
 腕が大鎌へ。やはり味方の被害は気にしていないのか再び戦艦の砲火が全方位を埋め尽くす。
「滅牙ッ! 絶・衝・壁ッ!!」
 グレーのオーラを纏ったレクイエムが、その砲弾の全てを発射した主の下へと送り返した。
『理解。強靭な意志が実態を纏い超常的な効果を発生させる精神転化攻撃兵器と断定』
「平たく言えば気合じゃ!」
『ですが、このペースでは押し切られます』
 潰しても潰しても次から次へと敵機が現れる。
「……まあ、ボムは節約せんといかんな」
 だがルルティアは、余裕すら見せ始めていた。
「魂の無い鉄塊風情が……」
 片手間に雑魚を蹴散らしながらルルティアは吼える。
「生きるべき業を背負った修羅に敵うと思うてかッ!!」

『残存活動時間20時間』
「ちなみに、それ切れるとどうなる?」
『一切の行動が取れなくなり、生命維持装置が停止、本機体は自爆します』
「……それは流石にどうしようもないな」

『残存活動時間2時間』
「残りは?」
『敵勢力30%』
「鬼か」
『殺戮兵器です』
「そうだったな」
 右手で掴んだロボットの頭部をほおり投げると、巨大な機影が姿を現し始めた。
「アレは何パーセントじゃ?」
『敵勢力25%に相当』
「旗艦か」
『肯定』
「よし、潰す」
 光学迷彩を含む全ての迷彩を取り払ったその巨大な戦艦、と言うより機動要塞はルルティアとレクイエムに向けて、その無数の砲身を突きつける。

『何故、戦う?』
「……レク、突然どうした」
『否定。敵旗艦の通信です』
「なんじゃと?」
 それは、今まで一度も行われなかった行為。
 ルルティアは、この世界に来て初めて老人達以外の人物と接触した。
『何故、戦う?』
「生きる為だ」
 ルルティアがそう答えると、敵の猛攻が一瞬にして止んだ。
「……!?」
 まさか、その一言だけで敵の攻撃が止まるとは思っていなかったルルティアは面食らった。
 決定的な隙さえ発生させてしまったが、敵の攻撃は来ない。
「突然どうした。今更投降勧告か?」
『投降勧告はし続けていた』
「聞いてないぞ」
『聞こえていなかっただけだ』
「……マジか? レク」
 だが、レクは。レクイエムは一切反応を返さない。
 そして、レクイエムの体が、ルルティアと剥離し始めた。
「な……動かん!?」
『プロテクトを破るのに22時間も要するとは想定外だった』
 ルルティアは、視覚と聴覚だけを残されて拘束されたに近い。
『その機体のOSは攻勢プログラムによって破壊された』
「なんじゃと!?」
 その言葉を肯定するかのごとく、レクイエムは動かない。
 そして、敵はルルティアの視覚と聴覚すら侵し始めた。

「な……んだ、この映像は」
『22時間の記録だ』
 次々と破壊される機体。
 そして、死んでいく人々。
「これが……」
『貴女の犯した罪』
 敵は、無人機ではなかった。
『これ以上、無駄な殺戮を行う必要は無い。貴女は10万と10人の人間を殺害した』
 今度は無数の文字列が羅列される。その文字列は、人名だった。
『その機体に拘束されて仕方なく交戦していたと言う事実は理解している』
 文字列と、映像を流し続けながら敵旗艦の通信は続く。
『私は人類統一機関ハイペリオン。人類の意思だ。法と追跡を免れた数十人の人間がその機体を作り上げた事は理解している。貴女が何故搭乗員として選ばれたのかは分からない。私には貴女の出自が分からない。故に説いた。貴女が正常な人間である事を期待して』
「おい」
『貴女の出自は今は問わない。その機体の拘束具は直ぐに外され、貴女は開放される。その後、貴女の素性を調べ、その上で法の判断を下す』
「……おい」
『貴女はもう戦う必要は無い。戦いは終わった。故に、安心して欲しい。貴女は救われる』

「いつまで寝ている気だレクッ!!」

『!?』
 旗艦、ハイペリオンの通信が途絶えた。
「さっさと起きろッ! レクッ!!」
『何故』
「気合が足りんぞッ! 残時間はまだ1時間半はあったはずだ! それともアレは嘘だったのか? そうとは思わん。だから起きろレク! 起きて戦えッ! レクッ!!」
 拘束具を引きちぎったルルティアの足が、レクイエムのコクピットを蹴り飛ばした。
『了解』
 再び、ルルティアの意識がレクイエムに同調し始める。
『何故、貴女は戦うのですか?』
「いい加減にしろ。貴様と話す事は無い」
『違います。私はレクです』
「……紛らわしいそ」
『何故、貴女は戦うのですか?』
「これまで散々戦わせておきながらお前まで今更それを聞くのか」
『私は、貴女が知りたい』
「なら教えてやる」

「生きる為だ」

『自分が生きる為に、他者を排除するのですか』
「そうだ」
『しかし、彼にもう交戦の意思はありません』
「妾にはある」
『何故ですか』
「生きる為だ」
『詳細を希望します』

「お前を信じているからだ、レク」

『――何故?』
「お前は人類の最後の希望なのじゃろう?」
『私は、殺戮兵器です』
「それは敵の方だ」
『私は、私は――』
「22時間半、お前と過ごした時間はそれなりに悪くなかった」
『――』
「訳の分からん大ボスの戯言なんぞ聞くに価しない。分かったか?」
『――理解』
「なら、奴を叩く」
『了解』

 形を失い、雪原に広がっていた液体金属が、”クラウ・ソラス”が再び刃の姿を取り戻す。
『何故』
「分かったんじゃなかったのか!」
『いえ、今のはハイペリオンです』
「紛らわしいッ!!」
『何故、貴女は戦いを続ける?』
「貴様が気に食わんからだ」
『その為に、たったそれだけの事で、多くの人命を損なっても良いと言うのか?』
「そんな事は知らんッ!!」
『理解――不可能』
「貴様には永遠に分からんだろうよッ!!」

 ルルティアとレクイエムはハイペリオンの装甲を突き破り、内部を破壊しながら突き進む。
 確かに――そこには人間が居た。
 しかし、それでもルルティアとレクイエムは止まらない。
『検索完了。機関部及びCPUの座標を特定しました』
「了解……と、こっちにまで移ってしもうたわ」
 無軌道にハイペリオンの内部を食い散らしていたルルティアとレクイエムは、その場所に向かって一直線に進む。
『何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故』
「五月蝿い。通信切れんのか?」
『残念ながら』
「仕方ないな。さっさと頭を潰すか」
『何故勝てない! 何故強い!』
「ようやく本音が出たかラスボス」
『何故。何故。私は人類統一機関ハイペリオン』
「それ故にお前は負けるのだ」
『何故』
「本気で分からないなら冥土の土産にくれてやる」
 終に、ハイペリオンのCPUがルルティアとレクイエムの目の前に姿を現した。

「自ら生きる意志を持たぬ者に、生きようと足掻く者が負けてはならないからだッ!!」

 刃が、ハイペリオンのCPUに突き刺さった。

『残存活動時間10分』
「ふん、ギリギリでも勝ちは勝ちじゃ」
 ルルティアの意識が、レクイエムと切り離された。
「……まあ、もう戦う相手も居ないのじゃが。何故だ?」
 ルルティアの体に意識が戻る。頭部を固定していた球体が離れ、手足の拘束も外れた。
 コクピットハッチも開く。
『お別れです。私のエネルギーは補充できる物ではありません』
「……そうか」
『最後に機関部を破壊しなかったのはそれが理由でしょう?』
「それが分かるなら、何故だ!」
 ルルティアの、そしてレクイエムの眼前には無傷のハイペリオンの機関部があった。
『私の活動エネルギーはそれでは足りないのです』
「……そんな、馬鹿な」
『私の戦力は、一個大隊に匹敵します』
 それは、最初に言われた言葉。そしてそれは現実だった。
「本当に、どうにもならないのか」
『お別れです』
「……そうか」
 ルルティアは、座席から立ち上がろうとした。が、体が上手く反応しない。
「情けないな。大口を叩いておきながら現実はこれか」
『身体への負担は軽いはずですが脳が極度の疲労状態にあると思われます』
「まあ、24時間戦い続けてきたのだからな……あと、何分だ?」
『120秒です』
「……分と言ったろうに」
 ルルティアの視界が滲んだ。
『貴女と過ごした24時間はとても有意義でした。ありがとうございます』
「……妾もだ」
『さようなら、ルルティア・サーゲイト。美しき戦姫』
「……ああ。お休み、レク」

 ルルティアは立ち上がった。
「まあ、そんなに柔ではないのじゃよ。妾はな」
 コクピットから降りて、レクイエムを見上げる。
「妾は生きる。お前の分もな」

 ルルティアはレクイエムに背を向けて歩き出した。
 生きる為に。



366300ba.JPG 


 あ……ありのままに今起こった事を話すぜ。
 メタルブラックのパクりを書こうとしていたらこれが出来上がっていた。
 な……何を言っているか分からねーと思うが俺も何が起きているのか分からなかった……
 勢い任せだとか深夜テンションとかそんなチャチな物では断じてねえ。
 もっと恐ろしい、レトロゲーシューティングの片鱗を垣間見たぜ……

参考資料
・メタルブラック
 (元ネタ)
・アインハンダー
 (元ネタその2 ハイペリオン)
・無限のファンタジア
 (ルルティアの基本設定)
・斑鳩
 (老人 レクイエムの基本設定)
・ケルト神話
 (クラウソラス)
・怒頭領蜂
 (殺戮兵器)
・機動戦艦ナデシコ
 (IFS)
・フルメタルパニック
 (レクの名前)
・バルドフォースEXE
 (オープンコンバット)
・LIVE A LIVE
 (OD10)
・新機動戦記ガンダムW
 (10万と10人)

b06033_icon_11.jpg 全部分かった人は居るかな? 居ないと思うがな!

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