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― 千尋谷キャンパス 中学3年H組 昼 ―
男子生徒
「宮藤、ちょっといいか?」
銀誓館学園千尋谷キャンパス。それが愛華の通う高校の名前だ。午前の授業が終わった昼休み、数人の女子と昨日のテレビの話で盛り上がっていた所に眼鏡を掛けた男子生徒が愛華に話しかけてきた。
この男子生徒の名前は雨宮銀二。愛華のクラスメイトの一人である。
銀二
「ちょっと話したい事があるんだ。放課後、教室に残っててくれないか?」
愛華
「ええ、いいわよ」
銀二は愛華の了承を得ると愛華から離れて行った。
女子生徒1
「え、今の……なに?」
女子生徒2
「もしかして、もしかするの?」
愛華
「?」
女子生徒1
「雨宮君って結構かっこいいよね」
女子生徒2
「ちょっと地味だけど、結構頼れるタイプらしいわよ」
愛華
「もしかして……私、告白されるの!?」
女子生徒1
「そうに決まってるわよ! 放課後誰もいない教室で二人っきりなんて」
女子生徒2
「うー、うらやましいわ! 愛華、どうするのよ?」
愛華
「困ったわねー。私、そういう事考えた事ないから」
その後、彼女たちの会話は銀二の品評会へと流れていった。あの眼鏡が知的でクールだとか、真面目すぎるとか、勉強はそこそこだとか、本人を無視して何処までも彼女たちの話は盛り上がっていき、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴るまでずっとその話題で持ちきりだった。
― 千尋谷キャンパス 中学3年H組 放課後 ―
夕焼けの光が差し込む放課後。教室には愛華以外誰もいない。
銀二
「いきなり呼び出して悪かったな」
そこへ、銀二が現れた。
愛華
「い、いいわよ! こういうのって突然来るものよね!」
愛華は若干テンパっていた。
銀二
「そうだな。突然来るから困るんだ」
銀二は一歩づつ近づいてくる。それだけで愛華の心臓は周りに聞こえる位に高鳴っていく。
愛華
「私、こういうの初めてだから……どうしようかなって、まだ悩んでるんんだ」
銀二
「……初めて?」
そこで銀二は怪訝な顔をする。
銀二
「そんな訳ないだろう。初めての奴に頼めないぞこんな事は」
愛華
「ガーンッ!! 初めてじゃない!? 経験豊富!? 私ってそんな風に見られてたのッ!?」
愛華がオーバーなリアクションをした事によって、銀二は始めて愛華が勘違いをしている事に気がついた。
愛華
「違うわよ! 私はセイレンケッサクな乙女よ!」
銀二
「……清廉潔白って言いたいのか?」
愛華
「そう、それよ!」
銀二
「ちなみに俺はお前……」
愛華
「ちょ、ちょっと待ってよ! まだ心の準備が」
銀二
「告白じゃねぇッ!!」
銀二は思いっきり要点だけを叫んだ。そうしないとこの少女は何処までも暴走していく事を知っているからだ。
愛華
「え?」
愛華が思考停止したのを確認して畳みかける。
銀二
「大体、予報の話をお前にするのは初めてじゃないだろうが! 確かに、お前一人に頼んだ事はなかったけどな」
愛華
「予報……事件ねッ!」
銀二
「そうだよ、まったく……」
銀二は溜息をついて自らの予報を話し始めた。
運命予報士。
その名の通り運命を予報する事ができる特殊な能力者が居る。
彼らの予報する運命とはゴーストによって誰かが命を落としたり、辛く苦しい思いをしたりする悲劇的な運命だ。その運命を能力者に伝えて、未然に防ぐのが彼ら運命予報士の仕事だ。
彼らは能力者であって能力者では無い。ゴーストと直接戦うための力を持っていない。だからこそ、運命予報士と能力者はお互いを必要とする存在なのだ。
愛華
「ターボばあちゃん?」
銀二
「有名な都市伝説だな……ちょっと古いが」
銀二の話を要約するとこうなる。
とある海岸を走る一本の道路。明け方にこの道路を時速60kmほどで走っていると突然、サイドミラーに老婆が現れるというのだ。それも、被害者と同じ速度で走る老婆が。
今回の被害者はバイクでこの道を通り、驚いて速度を落とした所を襲われるという予報だった。
銀二
「よく言われているのはトンネルの中で現れるって言うが……それよりもスピードを落とすと襲われるって所が問題だ。それに、出現条件も難しい」
銀誓館の能力者の大半は当然学生である。車やバイクの免許を持っている人間となるとかなり限られてくる。
銀二
「だが、車やバイクを使っても相手はかなりのスピードだ。運転しながら倒すのは難しい……っていうか無理だろうな」
愛華
「そこで私の出番って訳ね!」
銀二
「そうだ。エアライダーのエアシューズなら時速60kmを出せる。しかも車やバイクと違って運転をする必要も無い」
愛華
「分かったわ、任せておきなさい!」
銀二
「まてまて、話しは最後まで聞け。どうもこのゴーストは用心深いらしく一人で走行している時しか現れないらしい。つまり、エアライダーが一人で戦わなければならないって事だ。
それだけじゃない。エアライダーといえど時速60kmで走行中に戦闘行動を行うのは難しいだろう。エアライダーの中でもエアシューズを相当修練してる奴じゃないと駄目って事だ」
愛華
「それならやっぱり私しかいないじゃない! 大丈夫、なんとかなるわよ!」
銀二
「その自身の根拠は聞いても無駄なんだろうな……とにかく、俺が手助けを出来るのはここまでだ。後はどうやってこのゴーストを倒すか考えてくれ」
愛華
「私が蹴り倒せばいいじゃない!」
銀二
「…………」
やっぱり、この馬鹿に相談したのは間違いだったかもしれない。銀二はそう思ったが既に話してしまった以上この馬鹿は確実に現場に行くだろう。他のエアライダーの当ても無い以上やっぱりこの馬鹿が何とかする事を期待するしかないのだ。
幸い、この馬鹿には出来る妹がいる。それに、頼れる先輩もいる。多分、何とかしてくれるだろう。銀二は自分にそう言い聞かせた。
銀二
「まあ、がんばってくれ。じゃあな」
愛華
「じゃあ早速行ってくるわ!」
止める間もなく、エアシューズに履き替えていた馬鹿は窓から飛び出して行ってしまった。
銀二
「……明け方に出るって言っただろうが……」
猛烈な不安にかられた銀二は携帯電話を取り出した。馬鹿な姉の手綱を握れる唯一の人物、出切る妹に事件の説明をするために。
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