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― 荒事処理屋サーゲイト 応接室 昼 ―
中年女性
「お願いします。うちの子は不良なんかじゃないんです」
中年女性は心ここにあらずといった感じで事務所を去っていった。
ルルティア
「やれやれ、どいつもコイツも似たような事しか言わないのう……」
一方のルルティアも少し疲れた感じでぼやく。
ルルティア
「うむ……まあ、これは本腰を入れる必要があるな」
ルルティアは立ち上がり出口へと向かった。
ルルティア
「山本組をあたってみる」
メルティア
「了解。お気をつけて」
― 山本組 正門 昼 ―
ルルティアは大きな門に付けられた人間用の扉の近くにあるインターホンを鳴らした。
扉が内側から開き、ガラの悪そうな男が現れる。
ガラの悪い男
「なんだお前。ここはガキの遊び場じゃねぇぞ!」
男は凄みを入れて言ったがルルティアは動じず無言で睨み返した。
すると、男は一歩後ずさった。本能的に目の前にいる相手の力量を悟ったのだろう。しかし、男は自分の巻を信じる事ができず、
ガラの悪い男
「なにガンつけとんじゃオラァ!」
ルルティアに殴りかかった。
ルルティアはその腕を掴み、無造作にほおり投げる。宙を舞った男は地面に叩きつけられ動かなくなった。どうやら受け身を取るくらいは出来るようなので致命傷には至っていない。
騒動を聞きつけたらしく、強面の男が出てくる。そして入り口の参上を見るなり大声を上げて怒鳴りつけた。
強面の男
「ナニしとんじゃワレェ!」
ガラの悪い男
「あ、アニキ! こいつ、只者じゃ」
強面の男
「このタラズ! ワレに言うとるんじゃ! 先生に失礼じゃろうが!!」
ガラの悪い男
「せ、先生!?」
強面の男はルルティアに頭を下げて謝罪した。
強面の男
「申し訳ねぇ先生! うちの若いのが」
ルルティア
「なに、よくある事じゃ。妾は気にしてはおらぬ。それよりも」
ルルティアは先程投げ飛ばした男に顔を向けた。
ルルティア
「お主、力量を察したのは褒めてやろう。次は適切に対処する事じゃな」
ガラの悪い男
「こ、この方は一体……?」
強面の男
「よく覚えとけよ。このお方は佐川縷々先生。組長にも縁がある相談役じゃ」
― 山本組 応接間 昼 ―
若頭
「うちの若いのが迷惑をかけたようで申し訳ない」
ルルティア
「かまわぬといっておろうに。この外見だとこの手のトラブルは耐えんからのう」
若頭
「そうですね。先生は今日もお美しい」
ルルティア
「ふっ……世辞と分かっていても面と向かって言われると照れるな」
若頭
「……いや、それが本気で先生に惚れ込んでる奴らがいるらしくて組の中でファンクラブが……」
ルルティア
「……マジか」
若頭
「以外に和服が似合うんじゃないかとか、やっぱゴスロリだとか、制服が姿が見たかったとか……」
ルルティア
「……詳しいな」
若頭
「……失礼しやした。今の話は忘れてくだせぇ」
ルルティア
「まあ、好かれるのは悪くないので構わぬが……まさか、こんな所に隠れファンがいるとは流石の妾も予想外だった」
ルルティア
「……もう少し顔を出す回数を増やしてやろうか?」
若頭
「先生ならいつでも大歓迎です」
ルルティア
「うむ、善処しよう。さて、その前に仕事の話がしたいのだが……」
若頭
「へい。本日はどのようなご用件で?」
ルルティア
「……こいつらを知らぬか?」
ルルティアは持ってきた写真付きのプロフィールを出した。行方不明の若者の物でサーゲイトで受けたものは勿論、メルティアが調べ上げたそれ以外の若者の行方不明者も含まれている。
若頭はそれを一枚一枚丁寧に目を通しながら答えた。
若頭
「見覚えのある奴は居ますね。ゾクやってる奴ですよ」
ルルティア
「ふむ……こいつ等は全員行方不明になっている奴らでな」
若頭
「先生が動くって事は、もしや?」
ルルティア
「うむ、その可能性も考えている」
若頭
「そいつはマズいですね。コイツを借りていいですか?」
ルルティア
「ああ、頼む」
最近、行方不明になる若者が多い。始めに気づいたのはメルティアだった。
メルティアは運命予報に頼らず様々な分野でゴーストが関係していそうな異常な事件を調べている。勿論、銀誓館の許可を得て。
運命予報は世界結界の歪みからゴーストの絡む事件を予報する事ができる。
しかし、運命予報士の数は限られている。また、予報が出るのはゴーストの出現がほぼ確定し、惨劇が起きるその直前。緩やかに腐敗するように進行する事件を予報する事は難しい。
また、銀誓館の戦力はその大半が学生だ。学生の身分では立ち入りにくい場所、入り込みにくい事件などもある。
そこを埋める形で、尚且つルルティアとメルティアの二人の能力者の規格から外れている能力によって銀誓館では解決しにくい事件を解決する。
それが、荒事処理屋サーゲイトの裏の姿である。
若頭
「お待たせしやした」
ルルティア
「首尾は?」
若頭
「先生にご満足いただけるかと」
若頭は地図を広げた。その中に赤い丸で囲まれたアパートがある。
若頭
「このアパートに問題のガキ共が出入りしている所を見た奴が何人かいやした」
ルルティア
「ふむ……このアパートだな? 分かった。ついでにもう一つ頼まれてくれるか?」
若頭
「人払いと事後処理ですね? 分かりやした。今夜踏み込む気ですかい?」
ルルティア
「うむ……その方がよさそうだ」
若頭
「先生、お気をつけて」
若頭の態度にふと疑問を感じたルルティアはそれを聞いてみる事にした。
ルルティア
「聞き入れが良すぎないか? これで何も出なかったらそっちの面子をつぶす事になりかねんぞ?」
若頭は予想していなかったルルティアの言葉に目を落として答えた。
若頭
「あっしは見た事があるんです。ゴーストって奴を……あれは化け物でした。あっしがこうして生きていられるのはその時犠牲になったアニキと、駆けつけた銀誓館のガキ共のお陰だったんです。
情けねぇ事にあっしは敵いもしねぇ化け物に突っ込んで……」
ルルティア
「……すまぬな、悪い事を思い出させたようじゃ」
若頭
「いえ、いつも肝に銘じてるんです。自分のできる事をすると。あっしらはお天道様の光を受ける事ができない日陰者。でも拾ってくれた組長や育ててくれたアニキに面合わせられねぇような事はしたくねぇ。
悔しいが、ゴーストにはあっしらが何人束になっても敵わない。でも、だからと言ってガキ共に全部まかせっきりにするなんて大人として情けねぇ事はできねぇんです。
だから、あっしらはあの化け物と戦うための負担を少しでも減らしてやりたい……それだけなんですわ」
ルルティア
「……その気持ち、いつか伝わる時が来れば良いな」
若頭
「表には出られねぇのが俺らです。そんな事は期待しちゃしませんよ」
ルルティア
「それは……どうかな? 子供だからと甘く見ないほうが良いぞ」
若頭
「肝に銘じておきやすよ。連中の存在を表に出しちゃいけねぇ……奴らの存在を知っている奴は最小限に止めなきゃならねぇ。それでもめる事もありやすがね」
ルルティア
「そうだな。子供任せでは我々大人の面子が立たぬというもの……直接刃を交えるだけが戦いではない」
ルルティアはそう言って席を立った。
ルルティア
「では、大人の面子を守りに行くとしよう」
若頭
「先生、お気をつけて」
若頭は最後に一礼してルルティアを見送った。
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