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その日は雨が降っていた。
深夜の廃ビルの一階。そこに居る先客を追い出してから彼女達の修行は始まる。
一人は、黒髪の少女。雨で濡れた髪から雫が滴り落ちている。その腰までの長さがあるまっすぐな黒髪は、雨に濡れてなおこの少女を魅力的に引き立たせている。
顔立ちは一見幼さを感じさせる物の、そのルビーのような輝きを湛える真紅の相貌はどこか猛禽類のような恐ろしささえ感じられるほどだ。
少女は額に張り付く前髪を気にも留めず、手にした異形を構える。
それは巨大な鉄の塊。僅かに反った長い柄の先に爪のような鋭く鋭利な、それでいて金属の重厚感を与える刃が付いている。一言で言えば、死神を連想させる巨大な鎌だ。
もう一人は白銀の少女。夜闇の中でなお、月の光を受けて美しく輝く銀髪はショートカットに切り揃えられている。
こちらの顔立ちもまた黒髪の少女と同様に、幼さを感じさせる物の真紅の双眸を湛えている。
そしてその手にはやはり異形が備えられていた。それは右腕の肘から下を埋め込まれているような形のガトリングガン。少女の腕の三倍の長さを持つ鉄の異形は十二分な圧倒感があった。
それぞれの異形を構え、少女達は対峙している。
そして、一つの雫が弾けた時……始まった。
まず先に動いたのは黒の少女。凄まじい勢いの踏み込みで白の少女へと迫る。それに対し白の少女は、何の躊躇いも無く銃身を少女に向け発砲した。重厚な回転音と共にばら撒かれる銃弾はさらに左右に振り分けられ左右への回避を潰す。
だが、黒い影はその正面から潜り抜け、白の少女に迫る。そして煌く白刃が空を裂く。その刃は白の少女の腹を両断する寸前で――届かなかった。発砲の反動を利用して後方に跳躍し、その刃を避けたのだ。
だがすぐさま次の一撃が襲い掛かる。曲線を描いた刃は縦に転じ、更なる踏み込みと同時に襲い掛かった。今度は僅かながらの跳躍では避けられない。白の少女は銃器を上に掲げ、その刃を弾き返した。
しかし――
手応えが、軽い。踏み込みと同時に放たれた必殺の一撃である筈のそれはあっさりと弾かれて宙を舞い――そして、黒い影がそれを手にした。
咆哮と共に、今度こそ本当の一撃が迫る。
だがその時、少女の鋭敏な感覚が頭上から迫る危機に反応した。しかし、空中で今まさに一撃を放とうとしていた少女にそれを避ける術は無い。
同時に、白の少女が銃身を黒の少女に向け、弾丸を撃ち込み――
「……むぅ、今日は一本取られたか」
黒の少女が悔しそうに愚痴る。
「あのタイミングでの投擲は予想範囲内です」
白の少女が冷静に答える。
「いい手だと思ったのじゃがな」
「確かに――読み違えれば私の負けでした」
「まさか、天井にテラーバイトを仕込んでいたとはな。足元からのカウンターを仕込んであると思っていたのじゃが」
「ほぼ直感です。それに、足元に仕掛けるのは私の常套手段――当然、師匠ご存知でしょうから」
「牽制で使ってこなかった分捻りが無いと思ったら決め札だったとはな……やれやれ、直感勝負で負けるとはなんとも悔しいのう」
「――鍛えられてますから、ね」
語り合う黒白の少女には外傷は無い。それは彼女たちが身に着けている”詠唱兵器”のお陰である。一見、普通の衣服にしか見えないが能力者を様々な危険から守ってくれる強力な防具だ。この詠唱兵器があるからこそ、彼女達は本気の殺し合いをする事ができる。
最も、一本取ったらそれ以上の追撃は無しというルールは定められているが。別に本気で相手を殺したい訳ではない。
「さて……ラウンド2といくか」
「了解」
立ち上がる黒白の少女。彼女達の夜は長い。それは、今日の様に平和な時でも。
「さて、どうしてくれようか」
黒の少女は不敵に微笑む。
「――」
白の少女は無言で見据える。
彼女達の日常はただ続いていく。
日付変更に間に合わんかったーorz
今回はここhttp://www.raitonoveru.jp/index.htmへの持込用に
小説仕立てでお届けしたのじゃ。過去作のSS化も目下検討中である。
じゃ、また来週。
また明日! っていうか今日?
深夜の廃ビルの一階。そこに居る先客を追い出してから彼女達の修行は始まる。
一人は、黒髪の少女。雨で濡れた髪から雫が滴り落ちている。その腰までの長さがあるまっすぐな黒髪は、雨に濡れてなおこの少女を魅力的に引き立たせている。
顔立ちは一見幼さを感じさせる物の、そのルビーのような輝きを湛える真紅の相貌はどこか猛禽類のような恐ろしささえ感じられるほどだ。
少女は額に張り付く前髪を気にも留めず、手にした異形を構える。
それは巨大な鉄の塊。僅かに反った長い柄の先に爪のような鋭く鋭利な、それでいて金属の重厚感を与える刃が付いている。一言で言えば、死神を連想させる巨大な鎌だ。
もう一人は白銀の少女。夜闇の中でなお、月の光を受けて美しく輝く銀髪はショートカットに切り揃えられている。
こちらの顔立ちもまた黒髪の少女と同様に、幼さを感じさせる物の真紅の双眸を湛えている。
そしてその手にはやはり異形が備えられていた。それは右腕の肘から下を埋め込まれているような形のガトリングガン。少女の腕の三倍の長さを持つ鉄の異形は十二分な圧倒感があった。
それぞれの異形を構え、少女達は対峙している。
そして、一つの雫が弾けた時……始まった。
まず先に動いたのは黒の少女。凄まじい勢いの踏み込みで白の少女へと迫る。それに対し白の少女は、何の躊躇いも無く銃身を少女に向け発砲した。重厚な回転音と共にばら撒かれる銃弾はさらに左右に振り分けられ左右への回避を潰す。
だが、黒い影はその正面から潜り抜け、白の少女に迫る。そして煌く白刃が空を裂く。その刃は白の少女の腹を両断する寸前で――届かなかった。発砲の反動を利用して後方に跳躍し、その刃を避けたのだ。
だがすぐさま次の一撃が襲い掛かる。曲線を描いた刃は縦に転じ、更なる踏み込みと同時に襲い掛かった。今度は僅かながらの跳躍では避けられない。白の少女は銃器を上に掲げ、その刃を弾き返した。
しかし――
手応えが、軽い。踏み込みと同時に放たれた必殺の一撃である筈のそれはあっさりと弾かれて宙を舞い――そして、黒い影がそれを手にした。
咆哮と共に、今度こそ本当の一撃が迫る。
だがその時、少女の鋭敏な感覚が頭上から迫る危機に反応した。しかし、空中で今まさに一撃を放とうとしていた少女にそれを避ける術は無い。
同時に、白の少女が銃身を黒の少女に向け、弾丸を撃ち込み――
「……むぅ、今日は一本取られたか」
黒の少女が悔しそうに愚痴る。
「あのタイミングでの投擲は予想範囲内です」
白の少女が冷静に答える。
「いい手だと思ったのじゃがな」
「確かに――読み違えれば私の負けでした」
「まさか、天井にテラーバイトを仕込んでいたとはな。足元からのカウンターを仕込んであると思っていたのじゃが」
「ほぼ直感です。それに、足元に仕掛けるのは私の常套手段――当然、師匠ご存知でしょうから」
「牽制で使ってこなかった分捻りが無いと思ったら決め札だったとはな……やれやれ、直感勝負で負けるとはなんとも悔しいのう」
「――鍛えられてますから、ね」
語り合う黒白の少女には外傷は無い。それは彼女たちが身に着けている”詠唱兵器”のお陰である。一見、普通の衣服にしか見えないが能力者を様々な危険から守ってくれる強力な防具だ。この詠唱兵器があるからこそ、彼女達は本気の殺し合いをする事ができる。
最も、一本取ったらそれ以上の追撃は無しというルールは定められているが。別に本気で相手を殺したい訳ではない。
「さて……ラウンド2といくか」
「了解」
立ち上がる黒白の少女。彼女達の夜は長い。それは、今日の様に平和な時でも。
「さて、どうしてくれようか」
黒の少女は不敵に微笑む。
「――」
白の少女は無言で見据える。
彼女達の日常はただ続いていく。
小説仕立てでお届けしたのじゃ。過去作のSS化も目下検討中である。
じゃ、また来週。
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